野毛ストーリー

  • 調理上の唄(2) (大谷一郎)

      敗戦。 焼けただれた街で、関内のレストラン 「キムラ」のご主人、貴邑富士太郎さんは、遺体 の処理をする明け暮れであった。 そんな中にあっても、富士太郎さんは、心のす みで理想の料理を考えている。焼け跡に座り

    • Posted 8月 12, 2019
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  • 調理場の唄(1) (大谷一郎)

    野毛の桜木町駅寄りに、「キムラ」という洋食店 がある。この辺ではめずらしく、店の前に看板も 出していなければ、ウインドーに値段表もない。 観葉植物が並んだわきに、明るい木製の扉が、中のぬくもりを大切にするように、ぴしりと

    • Posted 8月 6, 2019
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  • 桜木町デパート[1] (大谷一郎)

      「桜木町デパート」。今四十代なかばすぎの人たちは、忘れられない思い出を持っているに違いない。 あの百貨店ではない。二階建ての建物がすべて三坪に仕切られ、百二十コマからなる棟割り長屋式の飲み屋のデパートである

    • Posted 7月 28, 2018
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  • 桜木町デパート[2] (大谷一郎)

    →前回からつづく   昭和三十四年。亀井政江さんは、桜木町デパートの一階中ほどに、三坪のコマを借りて、スナック「M」を出した。 店の内装もこぎれいにできたし、ピンからキリまである店並みでは、まず上の方。しかし、

    • Posted 7月 28, 2018
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  • 桜木町デパート[3] (大谷一郎)

    →前回からつづく   桜木町デパートの中ほど、今でいうなら牛井の 吉野家に向かい合うあたりに、不思議な店があっ た。 「安定屋」。屋号からして変わっているが、それ より何より、目を見張るのは、その商売のやり方

    • Posted 7月 28, 2018
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  • 星空の銭湯 (大谷一郎)

      昭和二十一年、野毛二丁目に野天風呂があった。 安本静江さん(70)はフトした表紙に、ゴッタ煮のようだったあのころを思ってなんともいえない気持ちになる。 横浜大空襲をのがれて、久保山から帰ってくると、余燼の中

    • Posted 11月 10, 2017
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